妊娠中

4Dエコーを体験してきた話【note再掲】

いつも通っている総合病院とは違うところで、おなかの子の4Dエコーをやってもらってきた。
駅前商店街の中腹にある、院名に名字が入っているような規模の産婦人科。小さな待ち合い室はいっぱいで、椅子が足りず、立っている人もいたくらい。
服をめくったり着たりも含め、計30分で5,500円。撮影時間は15分超で、そのすべてをDVDに焼いてくれる。
4Dエコーだけやりたい!という私のような妊婦の受け入れもしているので、人気があるのもわかる。
私も1ヶ月前からWeb予約を入れて、本当に本当に楽しみにしていた。

病院へ向かう道中にあっても、夫は「どうせ数ヶ月後には会えるし、別に今から顔は見なくてもいいけど、妻がそんなに見たいって言うんなら夫である僕も楽しみ」くらいのスタンスだった。
それもわかるんだよね。世間一般、父親にとっての胎児っていうのは「妻の腹の中にいて、いずれ出てきて育てることになる生きもの」くらいの感覚だと思う。
一方母親にとっては「出てきてからではなく、もう何ヶ月も前の1ミリもないころから育て続けてきている生きもの」でしかない。めちゃくちゃ動くし存在は実感しているけれど、何が入っているのかいまいちわからない。
ほんとうに赤ちゃんなの?私から栄養を吸いとって成長するってどういうこと?どうしてこんなに体調を悪くするの?みたいな感じ。
子の誕生は未来に起こるんじゃない!今ここで、何ヶ月も前から起こっているんだ!というのは、夫に対して内心何度も抱いてきた主張であり、小さな鬱憤でもあった。
(この十月十日という長期間でちょっとずつ育まれた意識のズレに関しては、産後の夫の育児参加によってちょっとずつ縮めていくしかないと私は思っています)

ともかく私はとても楽しみにしていて、それは顔や動きを鮮明に目にすることによって「自分の腹に何が入っているか」「それは慈しめるものなのか」の実態を確認できると思っていたから。
かわいいと感じられるかどうかはあまり自信がなかった。”4Dエコー”で画像検索しても、黄色いカエルみたいなふやふやな宇宙人がたくさん並んでいるのしか見られなかった。
「もうこんなにパーツを視認できるんだ」という感慨はあったけれど。

そんなこんなでのぼった診察台。やさしくかわいい助産師さんと雑談しながらジェルをブビュッと塗られ、最初は見慣れた白黒2Dから。
そうして顔のところにアタリをつけて、パッと4Dで大きく表示された我が子の顔。凹凸があるような、ないような…。
動くし、見慣れていないもんで、説明してもらってやっと顔のパーツを認識する。そこからはもう人間の顔にしか見えなかった。
片手が顔の横にあって、もう片方の手は上げたり下げたり、ぷくっとした唇はちょっと笑っているような。
手で足を持ってる!まぶたはまだ腫れぼったい?鼻は夫似?私似?キャッキャとはしゃぐ私たち夫婦。
そうして顔をひとしきり堪能させてくれたのち、おもむろにお股の方がズームアップされ、「ここが先っちょ!ここが玉袋!立派ですね〜。で、この線が尿道です」と。
性別はいつもの病院でとっくに聞いて知っていたので、確認できればいいかなくらいの気持ちでそれを伝えていた。
のに、なぜかじっくりと時間をかけて局部を丹念にチェックし、玉袋を連呼する助産師さん。わかった…玉袋とちんちんがあるのはわかったよ…ありがとうございます…。

散々玉袋を目に焼きつけたあと全身画像に戻ったら、息子は気でも損ねたのか、すっかり私の背中の方を向いてしまっていた。
ゴツゴツの背骨がよく見えた。助産師さんがいくら私のおなかを「ちょいちょいちょい〜!見せてよ〜!」と揺らしてもだめだった。頑固者。
あとは、足の指が細部までちんまりと5本ついているのを見たり、耳たぶを見たり、髪の毛を見たり、している間にタイマーが鳴って終了。
最後はあったかいタオルでおなかを拭いてもらい、さっぱりとして冷えることもなかった。

すべてを終えて思ったのは、ひたすらに「やってよかった!」ということ。
ちゃんと人間のかたちをした生きものが自分の中にいて、しかもちゃんと夫と私のパーツを受け継いでいる。
彼は動いていて、意思をもっていて、ただ羊水の中にぼんやりと浮かんでいるだけじゃない。
いずれここから出ていく日のために、臍帯からたくさんの栄養を得て日々大きくなろうとしている。
ぐるんぐるん動いているのは魚じゃなかった。まぎれもなく我が子だった。
それがいとしくて、とってもうれしかったんです。

夫も「来てよかった…」と言っていた。
以前少し考えて以来すっかり頓挫していた名付け候補決めも、顔を見たことで張り切った夫が言い出しっぺとなりまた少し進んだ。
いまだにお花畑な頭になれず、親しい友人ほんの数人にしか妊娠を直接伝えられていないビビリの私。
母親になる自覚を少しずつ深めていくべく、5,500円で買った30分間。間違いなくそれだけの価値のある時間だった。

産道を通って外界に出てくるまでの残り時間を、しっかり最後まで私の責任で守りたい。
スマホに保存した息子の顔、不安になるたび見ていこうと思います。